【お役立ち情報】駅前に多くの店舗を構える不動産屋
【お役立ち情報】駅前に多くの店舗を構える不動産屋ブログ:17-12-28
当時の私は、
とある都市の大きな企業に勤め、マンションで一人暮らし。
ごく稀に母が田舎から私のもとを訪ねることがあった。
おいしいものを食べに行こうという私に、
母は親子水入らずで、のんびり部屋で過ごしたいと
わざわざ重たい野菜を抱えてやってくる…
ある日、仕事から帰った私は、
オートロックのロビーから部屋いる母に
「ただいま。あけてー」
インターホン越しに呼びかけた。
ところが、母からの返事はなく、
マンション中に非常ベルの音が響き渡った。
母が部屋の開錠ボタンと非常ボタンを押し間違えたのだ。
ロビーで頭を抱える私のもとへ、
青ざめた母がやってきた。
私は恥ずかしさのあまり母をひどく責めた。
騒動の後、部屋には
母が作った夕飯のにおいが立ち込めていた。
田舎から持ってきた野菜の和え物、
帰るタイミングにあわせて焼かれたであろう焼き魚、
細かく刻まれた葱の浮かんだ味噌汁に、揃えられた二人分の箸…
ショックの余り俯いて手をつけない母をよそに、
気まずい中、冷めた料理を私は黙って食べた。
あれから私も二児の母になり、
7~8年たった今になって
あの出来事を頻繁に思い出すようになった。
恥ずかしいのは母ではなく、
つまらない見栄で
かけがえの無い時間を台無しにした私だった。
今さらと思いつつも母に言った。
「お母さん、あの時ごめんね」
意に反し、母はその時の恐怖を、
近くにいた兄貴と笑い話のネタにしてケラケラ笑っていた。
私が責めたことなど忘れているようにみえた。
それでも、母を思う時、
私は真っ先にあの出来事を思い出す。
そして
「大したことないよ」
そう言えなかった自分を悔やみ続けると思う。
あの日の冷めてしまった母の手料理の味とともに…